永島暢子(ながしま ようこ)(2)

ひたむきに生きて-永嶋暢子と女性解放運動-

日時: 2023年9月22日、9月23日
場所: 八戸市公会堂文化ホール

■あらすじ

1977年7月 八木秋子(82)が収容されている養育院の藤棚の下にて

・個人通信「あるはなく」第一号発行の相京(28)との打ち合わせ

 タイトル決定、本筋への導入-永嶋暢子は八木にとって大切な人物、その想い出を展開する

・永嶋暢子

 嫉妬はなぜ女偏かとの疑問、「私は試験に出ても【忄】にする」というエピソード

 上京、震災での活動
 市川房枝らと炭鉱での婦人労働者の調査、そのルポは『婦女新聞』に掲載

・八木秋子

 結婚から子を置いて家出。離婚。父の看病のため木曾へ、父母を看取り上京 
 投書から東京日日新聞(現在の毎日新聞)記者に

・『女人芸術』などでの二人のめざましい活躍

 永嶋暢子の社会時評
 八木秋子の林芙美子との「九州旅日記」

・八木秋子の活動

 「サッコ・バンゼッチ事件」を題材にした創作劇「ボストン」(作シンクレア)
 重要な人物コルネリヤを演ずる

・地元八戸の岩織政美市議が永嶋暢子を調べて書いていると、相京と八木の話題として登場

・永嶋暢子の労働組合活動

 活動での逮捕(検束、数十回)、下獄
 出獄したが、同志であり愛人だった猪俣との関係は破局、
 獄外で支援してくれていた永嶋の女友達とすでに後戻りができないところに来ていた
 →失望・自殺未遂

・八木秋子の農村青年社での活動と挫折

 注:活動は頓挫し自己省察する日々を送り、再出発を決意する。しかし治安維持法違反にでっち上げられ再逮捕。全国紙での号外報道記事。下獄)

 出獄後、満州へ

・『輝ク』誌上の「消息欄」を通じて永嶋は八木へ連絡

・出迎えた満州奉天駅での二人の再会。満鉄「あじあ号-機関車パシナ」での象徴的場面

 「案外変わらないね」「幾星霜というところかね」

・満州新京を拠点とする二人の交友と活動

 「失敗はいい、しかし失望はダメ」という永嶋の言葉

・ソ連の参戦と別離

 八木は意に反しての引き揚げ。永嶋は避難民の世話をしているなかでの自殺(病死)

・戦後、永嶋暢子の死を知り、八木には「友を捨てた」という棘が心に刺さり続ける

  永嶋暢子:
 愛した同志であり愛人の男と親友と慕った女友達に裏切られ、
 憧れていた革命の国ソ連の非人間性に失望し、
 最後まで一緒と約束した私(八木)に裏切られてどれほど絶望したか

・最後の場面。八木の慟哭

 彼女は戦士でした。苦しむ女性たち子どもたちのために戦う優しい戦士
 ただひたむきにその幸せを願って。みんなが平和に暮らせる社会を目指して

■観劇後の私の印象

・この劇の魅力はストーリのみならず、視覚や聴覚の効果も計算し尽くされていると思いました。藤棚の花が目に焼き付く舞台を皮切りに、多彩な照明と音楽の効用、そして大道具の極めつきは「パシナ」。うれしかったし、楽しめました。

・小泉さんと高森さんのことを書きます。

・小泉さんの役(相京)は、八木秋子の回想を引き出すだけでなく、随所にはさみこまれたセリフは永嶋と八木の「華やかな『生』」と「絶望と死」をかかえるこの劇全体の進行に欠かせない「重要なバラスト(重し)」となっていました。ところで、劇中の写真を見て、私の若い頃に似ていると周りのものが言います。確かにちょっとそう思います。

・高森さんの最初のセリフ「したらなにかい」(八戸弁とうかがいました)という切り出しは絶妙でした。それまでの八木と相京のやりとりから、舞台を一気に切り替えるのに十分な切れ味を持っていたと思います。また、永嶋の死を伝える最後の場面でも、予想される八木の激烈な嘆きに違和感なく結びつく、迫力・熱演だったと思います。

・先に触れましたが、「時間」がこの劇のキーワードだと思いました。八木秋子通信「あるはなく」発行打ち合わせのわずか数週間の時間と回想される永嶋の長い生涯(時間)をどのように構成するかということでしたが、よくできていたと思います。

・打ち合わせの「場と時間」から「回想の空間と時代=時間」への「あいだ」には一枚の膜=幕があるに違いないのですが、それをいとも簡単に永嶋暢子役の大舘さんは跳び超えていらっしゃった。その飛翔は劇に弾みをつけ、回想のシーンにスピード感を出していました。

・いくつかのアップテンポの事例をあげれば、途中で何度あったのでしょうか、工夫された「早変わり」は観客に対し、視覚的なスピード感を伝えていましたし、炭鉱の縦杭をもぐるトロッコの具体的な各数字にもあらわれていました。

・極めつきは永嶋暢子と八木秋子のダンスシーン。それは当時の二人の華やかな「生」をみせるもので、『女人芸術』を象徴する女性たちの意気揚々としたモダンガール(通称モガ)ぶりを見事に演じるスピード感あふれたステップでした。

・養育院藤棚の下での「藤の花が『咲いて散る』僅かな時間」と「回想の二人の半生の時間」の複合的・重層的な差をこのような形で見せる演出、演技はすばらしかったです。

・さて、ここからは「華やかな『生』から「絶望と死」へとむかうことになります。
・永嶋暢子も八木秋子もそれぞれの「場」で立場の弱い人たちのために何とかしようとして、体制に抵抗し、弾圧を受けます。

・そしてです。外舘さんが「女阿蘭」の「愛だって時には戦いではないでしょうか」を読むくだりは、ひときわ切々たる思いで聞いておりました。実は、永嶋暢子が「女阿蘭」を書く8ヶ月前のこと、出所して一ヶ月の4月、タイトル「私に言い聞かせる言葉」の中で触れた言葉が女学校の時代の「嫉妬の文字の女偏のエピソード」だったのです。つまり、「素川絹子」と「猪俣禮二」の関係に自分は嫉妬しているのかどうかと苦悩していたのでしょう。そして「時間は私だけを置き去りにしてもうずっとさきへすすんでいってしまっていた」という、ここでもキーワードの「時間」という言葉が、珠玉のフレーズの中に出てきたのでした。

劇では冒頭にそのエピソードを出して、永嶋暢子の凛々しさ、厳しい妥協を許さない精神(八木が満州での付き合いの中で触れている)というイメージを観客にいっぺんに与える効果を引き出していますが、永嶋のその時の苦悩は底知れないものがあったと思わざるを得ません(猪俣を北海道まで追いかけ、そこにいた素川をみてあきらめたという話を聞いています)。これはこれで、永嶋をめぐる一つの物語となるでしょう。

・自殺未遂から満州行きまでは、二人の再生の道ですね。永嶋と八木が『輝ク』消息欄を通じ、声を合わせて「いざアジア号で新天地へ」といういきさつは、私も「パシナⅣ」1986で八木と永嶋の『輝ク』誌上での発言を注釈としてまとめ(タイトル:「あんがい変わらないね」「幾星霜というところかね)、『永嶋暢子の生涯』1987でも「重心を共有する女」として書いているので、とても気持ちよく、そのやりとりのリズムも心地よいものでした。

・そして、奉天「パシナ」での再会です。これは上記の『パシナⅣ』でも、八木秋子と永嶋暢子の関係の雰囲気を象徴する風景で、いつももぐり込み、そこにひたりたい気持ちになります。このシーンは佐々木さんをはじめとする劇団皆さんの熱意が込められていて、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

・いよいよ最後の場面です。

戦後、永嶋暢子の死を知り、彼女が体験したいくつかの「失望=絶望」を八木秋子は振り返ります。

永嶋暢子は:
愛した同志・愛人の男:猪俣と親友の女友達:素川に裏切られ、「失望=絶望」し、
憧れていた革命の国ソ連の非人間性に失望し、
最後まで一緒と約束した私(八木)に裏切られてどれほど絶望したか と 

大舘さんの八木が慟哭する最後の場面の迫真の演技に、涙したのは私だけではないでしょう。アンケートでも何人かはそう書いていました。

しかし繰り返しますが、その場面で、薄く透ける紗幕越しに見える永嶋暢子は颯爽として、瑞々しく、溌剌としており、八木秋子の慟哭とは対照的に、「蘇って郷土で上演される歓び」を外舘さんは身体全体で表現されていて、それを対比した演出とお二人の演技、その場面の照明と紗幕、音楽の総合的効果は素晴らしい余韻を劇に与えたと絶賛したいと思います。

八木の「置き去りにした」という、生涯忘れることができない「大陸満州の凍結した時間」はこの「ひたむきに生きて-永嶋暢子と婦人解放運動」上演によって溶けていくようでした。

考えてみれば、生活保護をうけて4畳半生活をしていた八木秋子を訪ね、そのただ者ではない風貌に感じ入り、その後、個人通信発行、著作集発行、没後は『パシナ』の発行を続け、岩織さんに出会い、永嶋暢子への八木秋子の思いが形になり、こうして地元の八戸で上演されるとは、初めて会った時などには想像もできないことでした。あのまま、どこかで縁が切れていたらこのようなドラマが生まれようがないでしょう。そう思うと歴史を創るということは面白いとつくづく思います。

最後に、この劇の魅力をあらためて申し上げます。観劇した後、活字で読む機会を得れば、その内容の深さ、様々な演出のねらいとその効果、そして、個性ゆたかな出演者の演技力の確かさが一層理解できるに違いないということです。

■ 観客の方の感想

【劇団やませ】ホームページより

http://yamase1107.cocolog-nifty.com/blog/2024/01/index.html

2023年9月22日・23日 八戸市公会堂文化ホール

「ひたむきに生きて」 -永嶋暢子と婦人解放運動ー

永嶋暢子/外舘暢子 八木秋子/大舘登美子 相京範昭/小泉宜紀 永嶋ノブ/高森恵子

作・演出/佐々木功 美術/大木伊佐人 音響効果/八奈見條史 舞台監督・照明op/工藤正明 大道具/福士義秋 宣伝美術/安達良春 制作/井畑潤 受付・会場/まなみ・福士政子

感想文

 四人しか出てないのにとてつもない大作感でした。本当に素晴らしい舞台でした。過去と現在が交じり合う構成が見事でした。一瞬で年代を切り変える八木秋子さすがですね。『時代が変わろうとしてる、それなのに・・・』のシーンが好きです。明るい友情の後ろにカゲをにじませる永嶋暢子もとても素晴らしかったです。相京範昭、永嶋ノブ・山本キク・黒子2、とても良かったです。黒子1の平泳ぎ、笑いましたとても良い。  市内鮫町 K 様

 八戸生まれの永嶋暢子さんの事を知り興味深く観ることが出来ました。又演技のすばらしさにのみ込まれていき涙が出てきました。  市内下長 M 様

 永嶋暢子は、八戸出身の当時は先進的な女性でありその生き方に感銘を受けておりました。永嶋さんのような真直ぐな女性のおかげで現在の女性の活動それにつながるジェンダーの問題がまだ不十分とはいえ進んでいるものと思いました。もっと彼女のことが知りたくなりました。やませさんが演じて下さってとても感謝しております。キャストは少数ながらやませさんのお芝居には難しそうなことも分かりやすくユーモアがあって益々ファンになりました。ありがとうございます。  市内江陽 K 様

 小生のオジも戦前からの地下活動に参加し常に部屋は2Fに借り窓下には草履をそろえておき何時でも屋根伝いに逃げる準備をして過ごしていたと聞いていました。今度の公演で時代の荒波を生き抜いた永嶋暢子と八木さんの生きざまに触れることができた気がしました。感動をありがとうございます。  市内長者 T 様

 大舘さんいつもお元気ですね。こちらが元気をいただきます。四人のキャストの方々皆さん全て良かったです。合間の音楽も絶妙でした。二人のダンスお上手!! ナレーションのお声さわやかでした。又の機会を楽しみにしています。ありがとうございました。お疲れさまでした!! 市内白銀 O 様

  難しい題材をよく脚本化し演技人も素晴らしかったです。南部(八戸)の女性がこの時代活躍しています。伝記も含めて今後も含めて今後も「やませ」でシリーズ化されることを期待しております。  市内新井田 A 様

 泣かされました。本当に大泣きでした。次回も絶対来たいと思います。  市内小中野 K 様

 これまで永嶋暢子さんという方をまったく知りませんでした。こうして解りやすく知る機会を与えて下さいましてありがとう御座います。お芝居良かった! ラストあたりで、照明がつくと女性が一人座っている、うつむいて。どんな状態で座っているのか直感分かりました。これって役者なのか演出なのか。これからも頑張って!!  70代 主婦 様

 緻密に計算されたストーリーと演技、感動しました。「ラーゲリーからの遺書」に通じるソ連への失望いかばかりだったでしょう。何年も前に永嶋暢子さんの本を読んだ記憶があります。が、すっかり忘れてしまっているのを思い出しました。又読み直したいと思います。  60代 やませは二回目の観劇のお客様

 良かった!! 特に舞台装置がよく作られていてよかった。照明が消え汽車が走る音が流れて、次に明るくなったら舞台に汽車が登場した時、おおお って思いました。短時間に、嘘って感じ、あれはどこから来たんですか? 舞台の脇から? 又はあそこで組み立てたんですか? どれもこれも時間的に無理、考えられません。不思議です。  70代 主婦 様

東京から来ました。こうゆう切り口での評伝もあるのかと面白く拝見しました。八木秋子の晩年を知るものとしても興味深くよく脚色上演していただけたことに感謝します。地元で長く上演活動をされていることに敬意を表します。皆様熱演で出ずっぱりよく伝わったと思います。  70代 東京からのお客様

 平塚らいてう、松井須磨子、市川房枝、林芙美子他知ってる人達の名前が出てきて身近に感じました。永嶋暢子さんのことが知りたいと以前から思っていましたので本当に良かったです。願うことは平和です。長い台詞よくも出来るものと感心致しました。次回が楽しみです。身体を大切に。また、お願いいたします。  70代 主婦 様

 先ずは役者の方々の好演に拍手 長い長いセリフでした。南部人はおとなしく消極的だと言われていますが永嶋さんという先駆者にスポットがあてられて何やら誇らしい思いがしました。どちらかと言うとかなり地味な舞台だと思いますがダンスとか台本の持つユーモアや演出があってよかったです。  70代主婦 やませは何回も観劇のお客様

 久しぶりにやませの公演を見させて頂きました。満州に渡ったくだりでは感動しました、まさかまさかの満鉄あじあ号の登場です。八戸にこういう先人が居たという事初めて知りました。  市内江陽 T 様

 前半は、今回は残念な感じかなと思ってみてました。けど戦争に突入、先に渡った八木秋子が待つ満州に永嶋暢子も渡ってからの流れは私好み。まさに芝居は迫真の演技でした。最後は感動でした。さすが“やませ”。そして、登場人物の御本人、相京範昭氏がいらしてたなんてびっくり (一瞬、作り話じゃないんだ…、と)パシナの客車を見れたのはごちそうでした次回も楽しみにしています。これからも良きお芝居、観せて下さい。  市内小中野 A 様

 「志」を持ち続けた生き方は道を開くんだと思いました。有難う。又会いましょう。  市内類家 M 様

 ラストで浮かび上がる、永嶋暢子さんが印象的で素晴らしかったです。  市内一番町 T 様

 今回の公演は少し難しく、中身の濃いものに感じました。八戸からこういう方がいたのだと初めて知り誇らしい気持ち。セットが面白かった。施設の広めの庭を感じさせながらの満開の藤棚、別の場所に明りがつくと永嶋親子、そのままスッと三人並んでかしまし娘、明りが変わると常磐炭鉱。そして、二人がドレスに着替えてダンスと目まぐるしく、衣裳も変わる。ぱっぱぱっぱ…。ドラマが中盤を過ぎたころ、明りが切り替わると満鉄の客車が舞台に登場。隣の席の女性が、ああとつい声を出し隣の家族らしい人に叱られてましたよ。  公務員 50代 様

 アジア号のセット良く出来ていました!! 相京さんが来ていることびっくりです。良い作品になっていると思います。 市内吹上 I 様

 最後に泣かされましたね。いつもながら劇に引き込まれました。ご苦労様でした。 市内妙 O 様

 セットがとても凝っていて素晴らしいです。老若の演じ分け、黒子さんの動き、全てにおいて素晴らしく楽しませて頂きました。皆様、大変お疲れ様でした!!  市内妙 O 様

 とっても感動致しました。演者の方々の真摯な熱意がとても強く伝わってきました。彼岸中日お墓参りをすませてきて良かったです。 市内一番町 O 様

 本日はI氏の付き添いとして観劇です。永嶋暢子さんが八戸で育って婦人解放運動に関わり八木さんと出会う。そして、中国に渡るところまでを舞台を見る事を通して鮮明に知る事が出来ました。何しろ、演劇を見ることが久しぶりで…、2時間に渡る劇をやり遂げることがいかに大変なのかを感じられた気がしました。とても面白かったです。 川崎市多摩区 K・T 様

 八戸出身の永嶋暢子の一生が知ることが出来て良かったです。自由と平和を得ることって難しい。しかしそれを得るためにたたかう人たち…、素晴らしいです。勇気づけられました。 市内一番町 W 様

 今回は、本当に全く知らなかった、故郷の先輩の人生を知ることが出来ました。いろいろな工夫をされた舞台で、今回もご苦労が偲ばれ、良い時間を過ごさせて頂きました。永嶋暢子さんのドラマかと思ってましたが、八木秋子さん中心のお話という感じになっていました。そんな作り方もあるんですね。それにしても「やませ」の故郷を掘り起こす活動は素晴らしいです。地元にこんな集団があることは有難いです。ありがとう御座いました。  市内小中野 O 様

 永嶋暢子の生き様が、私の母を思い出させてくれた。若い頃、母が職場でストライキをやったそうです。又、岩織政美さんが、永嶋暢子を世に出した事で、八戸にも女性解放の為に命懸けでたたかった女がいた事を知った。 市内吹上 H 様

 相京範昭氏本人も来八し感激 俳優全てよし 大道具・小道具・音響効果・衣裳スバラシかった 汽車良く出来ていたね 市内吹上 男性 のお客様

  誇り高く生きた女性! 貧しい人のために生きた人々、そんな誇り高い人生に触れた気がします。ありがとうございました。 60代 主婦 様

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